昭和の時代には、税務調査において調査官が恫喝したり高圧的に接してきたりすることがあったようです。しかし、時代の影響か、最近は紳士的に対応してくることがほとんどです。警察官も同じように随分物腰が柔らかくなったと言われております。
とはいえ、調査官も人間ですので、たまには怒って語気を荒げることもあります。もしかたしたら多少の演技が入っているかもしれませんし、アドラー心理学的には怒りという感情を見せることによって納税者のコントロールしようとする意志があるだけなのかもしれません。
皆さんは調査官を怒らせるようなことがないように、お気を付けください。
1、「あなた何をやっているんですか!」 怒り度★★★
税務調査の際は、基本的に録音を撮ってはいけないことになっております。法律上の禁止事項ではないのですが、長年の慣行として納税者側も税務署側もお互いに録音をしないという、いわば紳士協定として存在しています。
ところが、以前こっそり録音していた方がいらっしゃいました。私は途中で気づいて注意した方がよいのかどうか迷っていると、調査官が録音機に気づいて上記のセリフを頂戴いたしました。私がチラチラ録音機を見ていたせいではないと思いたいです。
法律上の禁止事項ではないので、処罰などはありませんでしたが、その後の税務調査の流れが悪かったのは言うまでもありません。
対策:税務調査中の録音はやめましょう。どうしても必要であれば、調査官にも税理士にもバレない方法で行いましょう。
2、「さっきは×××と言ったじゃないですか!」 怒り度★★☆
刑事ドラマなどで犯人の証言に矛盾があると、刑事役の人が厳しく追及するシーンがよく見られます。視聴者的にも、「犯人はこの人か!」と一気に犯人が劣勢に見えてくる場面です。税務調査でも同じことが起こります。嘘やごまかしの証言をして後で指摘されると、一気に調査が不利になります。記憶が曖昧な場合や、都合が悪い質問には「ちょっと調べてみます。」「後日回答いたします。」「○○さんに確認してみます。」などいったん時間をおいて対応を考えましょう。
嘘つきな性格でない人でも、税務調査の雰囲気に気押されたり、ちょっと後ろめたいことがあったりしてついつい嘘をついてしまうこともあります。多少やましいことがあっても堂々としていた方が結果的にはうまくいくことが多いです。
対策:嘘をつかない。思い付きでしゃべらない。平常心で対応する。
3、「この場合は△△△するのが当然でしょうが!」 怒り度★☆☆
調査官が税法を丸暗記しているかといえば、必ずしもそうではないです。時には、法律に書いていない不当な要求をしてくることがあります。上記のセリフは新人の調査官のものです。私はそれが不当な要求であることを知っていたので、どうスマートに言い返すのか考えていたところ、先輩の調査官が慌ててフォローしていたので角が立たずに済みました。もちろん、その後の調査がこちらに有利に進んだことは言うまでもありません。
調査官も法律の勉強が本業ではないので、こういう問題が起きるのは珍しいことではありません。所得税や消費税の調査でも、意味不明な指摘をされて国税庁のホームページを印刷して説明資料としたことが数回あります。「自分のところのホームページの記事くらい読んでおいて欲しいなぁ」とは思いますが、業務内外で勉強時間を取るのはなかなか難しいのでしょう。
かくいう私もまだまだ勉強不足なので偉そうに言えた義理ではないのですが…
余談ですが、長崎年金二重課税事件で有名な税理士の江崎鶴男先生が先日お亡くなりなりました。相続税法上の不備を指摘して国税当局と戦って法律を改正させた偉大な先生です。面識はないですが、同じ長崎市の税理士として私淑しておりました。この場を借りてご冥福をお祈りいたします。
対策:正しい税法の知識で戦いましょう。
税務調査には、野球や麻雀のようなゲームと同じように、試合の流れというものが存在します。(私見なので異論は認めます。) 基本的には実力がある方が勝ちますが、ちょっとした要因で流れが変わって実力者が敗北することもあります。変なところで足元をすくわれないように、調査官はできるだけ怒らせないようにしましょう。